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『アムラー』‥‥‥そう、今ではもう完全に死語になってしまい、どんなものだったのかさえよく思い出せないが、歌手の安室波平‥‥いや、安室奈美恵を教祖として崇めていると思われるような外見的共通項を持った女のコたちの総称、そんな感じだったと思うが、この看護婦の外見はまさにそのアムラーだったのだ。
彼女の場合おそらくまだ新米なのだろう、とにかく看護婦のコスチューム姿に違和感があるうえに、化粧もケバいもんだから「点滴しまぁーす」とか甘ったれたような声で近寄ってこられると、どこか場末のフーゾク店で“看護婦プレイ”に興じているような錯覚にとらわれ、ついついコーフンしてしまう・・・(；´Д｀)ハァハァ‥‥‥って、ウソですよ〜！？僕にはそんな趣味も実体験もありませんよ、ええ。ホントですってば(^_^;)
‥‥‥話を戻そう。手術の時、点滴は患部から一番遠い場所にすることになっているらしい。この場合左手の手術だから右足だ。ところがこのアムラー看護婦ときたら、僕の右足を見るなりこうぬかしやがったのだ。
「ヤッダぁー！この人、血管ほっそォーい！」
ムカッ！初対面の男に向かっていきなり「ほっそォーい！」なんて屈辱的な言葉で攻撃してくるとは、なんて無礼な奴だ。思わず「な、なんで知ってんの？」ってドキッとするじゃないか！？！？
さらに彼女は、おもむろに僕のふくらはぎのあたりをゴムひもでギュっときつく縛ったかと思うと、今度はその足に「パンパンパン!!!!!」と何度も平手打ち！おぉぉっ、看護婦プレイとＳＭプレイの合体技か！？こりゃたまらん(；´Д｀)ハァハァ‥‥‥だからそうじゃないっちゅーの！ハァハァしなーい！！‥‥‥なんでも、こうすると血管が浮き出て針を刺しやすくなるらしいんですよ！
だがアムラー看護婦は、パンパンしながらも「ヤダー、ほっそぉーい」を連発。僕は、右足ではなく右こめかみのあたりに、ピクピクと太い血管が十字型に浮き出てくるのを感じていた(-_-#)。
そしてガラにもなく（？）、心の中で思わずこんな超セクハラなことを叫んでしまったのである。
「こっ、このアマぁ〜、オレ様の極太の注射針ブチ込んで、ヒイヒイ言わしたろか〜!!!!!」
いや〜ホント、品がなくってすみませんねぇ(^_^;) でも極太とは言っても所詮は「針レベル」ってのが笑えるでしょ？そりゃ「ほっそぉーい」って言われるわ？？？
で、アムラー看護婦はしばらく僕の足をパンパンしたかと思うと、急にナースステーションの方へ帰ってしまった。これは自分では手におえないとあきらめてバトンタッチしに行ったな、とホッとしたのもつかの間、今度はたっぷり熱湯が入ったバケツを持って戻ってくると、容赦なく僕の右足をその中に突っ込んだのだ。アチチチチ！なにすんねん!!
さしもの僕もこのアムラー看護婦の攻撃の前にはタジタジ、動揺を隠せない状況になってきていた。なにしろ次の行動がまったく読めないのだから恐ろしいったらありゃしない。
そしてしばらくすると、アムラー看護婦は僕の右足を熱湯バケツから引き上げ、足の甲に浮き出た細い血管めがけて、いかにも慣れない手つきで点滴針をブスッと刺した。
「いてーっ！」僕は心の中で叫んだが、言葉には出さない。なぜなら、男の美学ではどんなに痛くってもけっして「痛い」と口にすることは許されないのだから。でも足の甲に針を刺されるのって、腕とかに刺されるのとは比べ物にならないくらい痛いんだよね。
そして最悪なことに、っていうか予想通り、針は血管からそれた。
「あれぇー？やっだぁー」と、お決まりのリアクションを見せるアムラー看護婦だが、ここからの行動はまったく予想外だった。
なんと！点滴針を皮膚に突き刺したままの状態でグリグリとコジって、強引に血管に刺そうとしやがったのだ。うおおおおぉ！それって反則技では？僕は歯を食いしばり、必死で痛みに耐える。こりゃもう拷問だね。
血管は針を刺そうとするとツルっと逃げるので、グリグリやってもいっこうに刺さらない。激痛は続く。そのうちアムラーの方もイライラしてきたようで、「あ〜もうッ！」とか言いながら針先の動きが激しくなってきた。あまりの痛さに汗がにじんでくる。もうだめだ。ガマンの限界。
「まっ、まいった！全部白状するからお願いだ、針を抜いてくれェー！」と、白状することなんか何もないのに思わず言いそうになったその瞬間、ただならぬ気配に気づいたベテラン看護婦が「どうしたの？」と様子を見にやって来てくれたのだった。まさに天の助け。
で、ベテラン看護婦さんはいとも簡単に、くるぶしのあたりにあった太い血管にすんなりと点滴針をブチ込んだのだった。これにて一件落着、である。やれやれ。
それにしても恐るべし、アムラー看護婦。最近よく「医療ミス」が話題になるが、これはもうそれ以前の問題だ。
政府も狂牛病や鳥インフルエンザウイルスなどの対応で大変なのはわかるが、どうにかしてもらいたいものである‥‥‥なんちゃって、ちょっとシモネタに偏りすぎたのでマジメな社会問題を取り上げて、軌道修正しておいた（←今さら手おくれ）。
作者注・現在のＭ整形外科にはこのような看護婦さんはおりません。念のため。
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Man-B's History 
Man-Bの入院日記
1996年8月、全日本選手権トライアル北海道大会に出場
