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看護婦軍側の“尿瓶攻撃”を見事にかわした僕だったが、その後も敵は『男の美学』を崩壊させようとしているかのように、手を変え品を変え執拗な攻撃を続けてきた。
まず、オペ前日の剃毛（ていもう）攻撃。メスを入れる部分の周囲の体毛を剃られるわけだが、盲腸の手術で陰毛まで剃られてしまう事はあまりに有名。
しかし今回は腕の手術なので、さすがに陰毛まで攻めてこないだろうと油断してたら、それが来たんだな。腕を剃り終わったところで「じゃ、腰を出してください」って。
「またぁ、冗談でしょ?」
「あれ、先生から聞いてません？腸骨を削り取って移植しますから、腰も切りますよ」だって。
腸骨っていうのは骨盤の前側の左右に張り出した部分。尺骨は折ってしまった場合なかなかくっつきにくい部類に入るらしく、骨のつきを良くするために腸骨の不要な部分を削って、折れた部分の周囲に移植するらしい。
そんな話は全然聞いてなかったけど、そういうことならどうぞ剃ってください、とパンツを少しずらしてやる。もし陰毛まで攻めてきたら抵抗するつもりだったが、ギリギリのラインまでで無事に剃毛終了。
お次はオペ当日の朝の浣腸攻撃。当日朝7時までにウンコがすっきり出ない場合は浣腸しますので申し出てください、だって？冗談じゃない、浣腸なんて男の美学の最大の敵（世の中にはこれのマニアも相当数いるらしいが）。こうなりゃ意地でも全部すっきりヒリ出してやる！とばかりにトイレに居座り続け、これも難なくクリア。
そして次は手術時の正装。Ｔ字帯をつけ、その上から術衣を羽織るように着るのだが、このＴ字帯ってのがクセモノ。最初"Ｔ字帯"って聞いた時、どんな物かわからなかったけど、なんのこたぁない、これっていわゆる"越中ふんどし"じゃん！？
で、このふんどし姿ってのは男の美学的にどうなんだろう？ってちょっと悩んだけど、「音太鼓座」とかの和太鼓奏者って、ふんどし一丁で見事に男の美学を体現してるわけだから、これはオッケーという結論に達し、自信をもって堂々とＴ字帯を締め上げる。おお、われながら男らしいぜぃ！ちょっぴり"さぶ"入ってるけど！？
と、ここまではまったく順調に事が運んで、看護婦軍との戦いは僕のほうが圧倒的に優位に立っている状況だった。そして手術の準備もそろそろ最終段階、点滴を開始する時間になったところで、看護婦軍側はついに切り札を投入してきたのである。
「小坂さぁーん、点滴はじめま〜す」
いかにも頭悪そーなしゃべり方で病室に入ってきたその看護婦を見た瞬間僕は驚いた。
「なんだよコイツ、もろアムラーじゃん！？」
そう、看護婦軍側の秘密兵器・『アムラー看護婦』が、ついに私の前にその姿を現したのだった‥‥‥。
↑Web上で探したイメージ画像。ちょっと違うけど‥‥‥。
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Man-B's History 
Man-Bの入院日記
1996年8月、全日本選手権トライアル北海道大会に出場
