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 マンビー小坂のツートラ初体験記 

 この記事は1994年6月、サンシャイントライアルに出場した後
 に書き、当時のトライアルジャーナル誌に掲載されたものです。

 人名等一部に手を加えましたが、ほぼフロッピーに保存して
 あったそのままで掲載しました。
(2004年6月UP)

↑この写真は95年の龍泉洞に出場した時



プロローグ

前日の真夏のような晴天とはうって変わって、その日は朝から冷たい雨が降っていた。
僕は雨雲に覆われた低い空を見上げ、「やっぱりな‥‥‥」と呟いた。

梅雨どきの開催にもかかわらず快晴になることが多いというサンシャイントライアル、そんな『サンシャイン神話』
も、僕が出場することできっと崩壊してしまうだろうという予感が現実のものとなって、なぜか僕の心の中は安堵
にも似た気持ちで満たされてゆくのだった‥‥‥。
 
「おおーっ、この文学的な滑り出し!すばーしぃっ!!そうかぁ、オレってアルミ溶接だけじゃなく文学的な才能も
あったのか!?まさに天は汚物を、いや二物を与えるっつーやつだな。となると才能がないのはトライアルだけじ
ゃん?いや〜テレるなあ、まったく‥‥‥え?オマエはだれかって? フッフッフ、よくぞ聞いてくださった。
われこそは20年前トライアル界に彗星のごとくデビューし、いまだに国際A級に上がれない万年B級ライダー、人
呼んで『マンビー小坂』ぬぁりぃ〜っ!っ!っ!‥‥‥」(←エコーがかかってる)

‥‥‥すみません、オープニングから飛ばしまくっちゃって。(引かずについてきて下さいねー!?)
なにせ本格的な文章を書くのは初体験なんで、舞い上がっちまって。

あっそうそう、初体験といえば僕もやっと済ませたんですよ、このあいだ。 えっ感想? そうねー、やっぱすごく
痛かった‥‥‥かな???

「オイオイ、いったい何の話なんだよ、このスケベオヤジ!」とお思いのアナタ、ちがうんですよそうじゃないんだっ
てば!ツートラ初体験の話なんですョ。

今年でトライアル生活20周年というこの僕が、このあいだ初めてツートラに出場したんで、その体験記をこれから
書こうっていうワケなんですよ!!奥さん、こりゃ読まなくっちゃ損ですョ!? (編集部の皆さん、つかみはこれく
らいでOKでしょうか?)



意外な事実

僕がツートラに出ないことは仲間うちでは有名で、「小坂はツートラが嫌いらしい」とか「実は小坂は原付免許しか
持っていない」などという噂が拡がったりもした。

確かに数年前、『男ライン、女ライン』なんてえのが流行った時は「そーゆーのってサー、なんかヤダなー」(三十
八歳にもなって女子高生みたいな文体でゴメン!)と思ったのは事実だが、ツートラが嫌いだなんて事は決して
ない。

免許の方は、ナナハンだろうがアッハ〜ンだろうが(?)何でも乗れる自動二輪免許を22年前に取っている。

しゃーない、真相を明かそう。 僕がツートラにずっと出なかった本当の理由は、実は‥‥‥‥お金がなくってマ
シンを二台買えなかったからだよ〜ん!(笑)

そうなんです。僕は86年からずっとTYに乗り続けていたので、ツートラに出場するには他に公道走行可能なマシ
ンを用意しなくちゃだめだったんですね。ところが今年はベータ・テクノに乗り換えたので、全日本に出るマシンで
ナンバーを取ってツートラにも出る事が可能になったんですよ。

僕自身は以前からツートラにも出てみたいと思っていたし、三留さん(あの超有名なトライアル界のコーネリアス、
三留知一氏。ひゃ〜ごめんなさい!)にも前から「小坂ちゃんのキャラクターはよ、全日本よりもツートラ向きだよ、
おお。」と誘われていたこともあって、ついに『小坂政弘、ツーリングトライアル界に鮮烈デビュー!』となった訳で
あります。



サントラ申し込みの甘いワナ

さてツートラに出る事は決めたものの、どの大会に出よう? 色々と情報を集め、日程、会場までの距離などから
サンシャイントライアルに決定したが、申し込み方法がよく分からない。

そこで、ツートラの達人である三留さんにそれとなく聞いてみたところ「おお、ウチのほうで一緒に申し込んでやろ
うか?」という話になり、ちょうどその日は関東選手権で、トロピカルクラブ(三留さんの所属しているチームで、オ
ーナーはこれまた有名な赤尾文夫氏)のマネジャーであるS野M子女史(日本の女性トライアルライダーの草分
け的存在としてこれまた有名。ご当人はマネジャーじゃなくて○△×□であると、聞いたことのない横文字を並べ
るが、日本語で「仕切りバ○ア」という言葉がピッタシ‥‥というのはウソですごめんなさい!そのうちブン殴られ
るなオレ)が来てたので「S野さん、あいかわらずスタイル抜群っすね!一瞬、今井美樹が来てるのかと思っちゃ
いましたよ。あっそうそう、僕今年サンシャイン出たいんですけど‥‥‥」と、バレバレのお世辞をからめて言う
と、彼女はニコッとしながら「あらそう、じゃあ一緒に申し込んであげる。」と、いとも簡単に僕の思惑どおりに事は
運んだのである。

「ふっ、女なんてチョロいもんさ‥‥」僕はポーズを決めながらそっと呟いたのだった。

数日後、S野さんから電話がかかってきた。

「もしもし小坂さん、サンシャインのエントリーしといたわよ。あっそうそう、それからこの話にはワナがあって、小坂
さんは私と同じ組で一緒に走ってもらう事になってるからよろしくね。うふふ、今から当日が楽しみだわ、じゃーね
バッハハ〜イ!ガチャン プーッ プーッ プー‥‥‥‥」

僕は受話器を持ったまましばらく動けなかった。

『S野さんと一緒に走る』‥‥それがどういうことを意味するかは僕には容易に想像がついた。それも鮮明なイメ
ージ画像つきで‥‥。

そう、それは例えばコースの途中に急な登りがあって、彼女が上りそこなってしまう。すると彼女はマシンをポイッ
と横に捨てて、僕に向かって「なにボケッと見てんのよ、早くマシンを上にあげといて!」とくるだろう。
一日中そんな調子で心身ともにボロボロになってゴールした僕にとどめをさすように、彼女はブーツの皮の色に
染まって茶色くなった素足を突き出し「おなめ!」と言うに違いないだろう‥‥‥。悲惨な想像は膨らむばかりで
ある。

それまで心の片隅にあった「ツートラデビュー戦でいきなり優勝すればもうモッテモテ、どんな女もイチコロさ! 
ふっ、オレも相当なワルよのう‥‥フハハハハ!」という僕の不純な目論みはガラガラと音を立てて崩れていっ
た。切れたはずの電話の受話器から「へっ、男なんてチョロいもんよ!」というS野さんの声が聞こえた気がした。

女の方が一枚も二枚もうわてだということを痛いほど思い知らされた、小坂政弘三十八の春の出来事であった。
(すみません、このへんかなり創作モードに入りまくってます。S野さんごめんなさ〜い!本当のS野さんはとって
もやさしいおねーさんでぇ〜す。)

失意の日々が過ぎ、サンシャイン当日が近づいて来た。

実は僕の知らないうちにS野さんと僕が乗り合わせで行くということに決まっていて、「えーっ聞いてないよー!」
と思ったが時すでに遅しである。

いや、S野さんとツーショットで行くことが嫌なわけでは決してないのだけど、家族以外の女性を一度も自分の車
に乗せたことがない、亭主の鑑のような僕にとってこれは『ザ・スキャンダル』である。

そう、アイドルにとってスキャンダルは致命傷になりかねないのだ。(何言ってんだろうオレ?)

出発の朝が来た。僕はフライデーやフォーカスのカメラマンが張り込んでいないことを確認した上で、S野さんと彼
女のマシンをハイエースTWK号に積み込んで、逃げるようにして三留さん達との待ち合わせ場所である東北道・
佐野S.Aへと向かったのだった。



新参者

佐野S.Aに着いてレストランで朝食をとっていると、三留さんとサンちゃん(国際A級三塚政幸選手)到着。

このお二人は前の週に開催された龍泉洞二日間トライアルにも出場し、サンちゃんはベータ・シント125で見事
オールクリーンを達成し優勝、三留さんも順位は忘れたがかなりいい成績を残して来たばかりで、(三留さんの龍
泉洞一日目の乗れっぷりはサンちゃんを完全に本気モードにさせるほどだったらしい)その姿は自信に満ちあふ
れマーラ‥‥いや、オーラを放っているようにさえ見える。

三留さんが「小坂ちゃんなんてツートラじゃ新参者じゃん、今のオレには勝てねえよ。」とひそかに思っていること
はみえみえであった。
そしてサンちゃんは、シント125でツートラ二連勝を達成しようとひそかに闘志を燃やしている。
僕は僕で、多少後ろめたい気はするが全日本仕様の完全戦闘モード・マシンを持ち込むことによって、ない腕を
マシンでカバーするという卑劣な(?)手段で、あわよくばとひそかに思っていた。

そして、S野さんはS野さんで僕を一日奴隷のようにこき使ってやろうとひそかに思っているはずだった。
これに対抗する作戦はすでに練ってあった。そう、スタートと同時にぶっちぎる、これである。後でS野さんが「何
でおいて行っちゃうのよー!」と言ってきたら人差し指を立てて左右に振りながら「チッチッチ、男ってもんは、女よ
りも勝負の方が大切なときがあるのさ!」なんてシブく決めりゃきっと許してもらえるだろう。(?)

とにもかくにも、各人各様の思惑を胸に、見るからに怪しげな四人組(二人と二匹という見方もできるが‥あっご
めんなさいもう言いません!)は一路山形へと向かうのであった。

道中でS野さんに「あした僕、S野さんさんとずっと一緒に走るんですよね?」と一応聞いてみたら「あらやだよこ
の人ったら本気でそんなこと信じてたの?あれは冗談よ、じ・ょ・う・だ・ん!あたしそんな女王様のような事しな
いわよ。んもぅ小坂さんってばいい年ぶっこいてウブなんだからぁ!」(すみません、絶対こんな言い方じゃなかっ
たと思います。また創作モードに入ってしまいました。)という答えが返ってきた。やっぱS野さんは優しいおねー
さまだった?

そうこうしているうちに会場に到着した。やはり全日本とは全然違う雰囲気である。全日本の会場ではカリで‥‥
いや、肩で風切って歩いている僕だけどここではただの新参者。国際A級と違って顔が全然売れてないから、知
らない人に「誰だアイツ、あんまり見ない顔だな。まあ見たところ俺様よりヘタクソそうだな、フン!」とか思われて
そうでなんだかコワイ。初体験なんだからや・さ・し・くしてね、なんつってね!グフェフェフェ〜!(これじゃ本当に
ただのスケベオヤジだな、まったく。)



悪夢の第3セクション

いよいよ大会当日の朝がやって来た。昨日の天気から一変して雨が降っている。

スタート前、赤尾さんが何やら怪しげな薬を差し出し、「飲む?」と聞くのでよ〜く見るとそれは高価なローヤルゼ
リーだった。
一瞬いただこうと思ったが、Mさん(実名は伏せておきましょう)がこないだ「いゃーローヤルゼリー飲むとすげー
効くぜ小坂ちゃん、もぅ朝なんかビンッビンだぜ!おお。」と目を輝かせながら言ってたのを思い出し、変なふうに
効いちゃって登りで体を前に入れられなくなると困るので、やっぱ飲むのやめといた。(ちなみにMさんは当然飲
んでました。)

そしていよいよスタートの時がやって来た。

「きゃ〜っっ!小坂さんガンバッテ〜!」という大勢の女性ファンからの黄色い声援を背中に受けながら、僕は第
1セクションを目指し、愛車“ベータ・テクノTWKスペシャル/サンシャインヴァージョン”のスロットルをフルオープ
ンにした‥‥‥え、なに? 創作じゃないかって? うるさいなぁ、人がせっかく気分よく大薮春彦モードに突入し
てるのに! ああそうだよ創作だよ。悪かったね、どーせオレにゃあ女性ファンなんていねーよ!(←開き直り)

ついに第10回トロフィーモチュール・サンシャイントライアル大会の戦いの火蓋は切って落とされた。
今回僕がマークしているのはサンちゃんとヤスさん(TWK一番のお得意様、スーパーウイングまるやまの社長で
あり、元全日本トライアルチャンピオンでもあり、サンシャインの常勝男でもある国際A級丸山胤保選手。ヨイショ)
の二人。

優勝するのはこの二人のどちらかで、トップの減点はおそらく5点以内、オールクリーンの可能性もあるだろう、と
いうのが僕の予想だ。
ただサンちゃんはマシンが125なので急角度のヒルクライムのようなセクションがあるとちょっと苦しいんじゃない
かな?

僕としては、とにかく5点だけは取らないよう気をつけよう。そうすれば僕にも勝機が訪れる時があるかもしれな
い。

第1、第2セクションは順調にクリーン。サンちゃんも当然同じ。三留さんもさすが乗れてるだけあって00だ。この
ままクリーン合戦がずっと続くのだろうか?自然と緊張感が高まってくる。

しかし波乱はあっけないほど早くやって来るのであった。

第3セクションは大きめの岩がゴロゴロした沢を上り、最後に左から右へ沢を横切ってわきの道路に上がってア
ウトという設定だが、中ほどの水が深くなっている所と、出口の手前、道に上がるところがちょっといやらしい。

サンちゃんがセクションイン。水が深い所をよけて誰も通っていないラインを選んだが少しラインがずれてオラオラ
状態になる。「おおーっ」とみんなが固唾をのんで見守る中、全身を力こぶにしてピンチを脱したかに見えたが出
口の手前で引っ掛かりついに足を着いてしまう。減点1だ!

「よしっ!ここでクリーンすればサンちゃんを1点リードしてプレッシャーをかけられる。勝負だっ!」僕がセクション
インする。

ライン、スロットルワーク、ボディーアクション、すべてが完璧で全く危なげない走りで出口の手前まで来た。
出口の先ではみんなが僕の走りを凝視しているが、その表情からは「ちぇっクリーンか、つまんねーの!」という
気持ちがみえみえである。

「へっ、おあいにくさま。ダテに全日本でポイント取っちゃいねーんだよ!」

心の中でそう叫びながら出口に向かってスロットルをひとひねりしたその時、マシンの運動方向が一瞬のうちに
変わり、次の瞬間僕とテクノは出口まであと数十センチを残して沢の中に横たわっていた‥‥‥。

『ドハハハハハハハハーッ!』

それまでの沈黙を破って、これ以上はないほどの大爆笑が湧き起こった。その中にはトライアルジャーナルの泥
氏と加藤氏の姿も見える。

「まっ、まずい!写真を撮られてしまったか?カ、カメラをぶんどってフィルムを飲み込んでしまおう!」真っ白にな
った頭の中でいろいろな考えが浮かんでは消えた‥‥‥。



ツートラあなどりがたし

第3セクションの5点のショックで、僕の精神状態は完全に「へたくそモード」に切り替わっていた。

第4セクションの中ほどの大岩ステアがすごく高く見えて、「落ちるんじゃないだろうか?」と不安で真剣に下見し
ていると、圷さん(モトスパイスMの圷龍幸さん。国際A級乾智一選手のサポート役として有名。読み方は「あく
つ」さんです。)がインしてきた。

「バボさん(圷さんの愛称)だいじょうぶかな?」なんて思っているといとも簡単に大岩に登り、しかも上でピタッと
スタンディングした後、ラインを選んで降りていった。
「えっ、バボさんてこんなにうまかったの?」なんて唖然としていると今度は三留さんがセクションイン、こちらもま
た余裕で大岩に登り、軽々とクリーンしてしまった。

「ゲっ、三留さんもすげーうめえ!これじゃ龍泉洞でサンちゃんがマジになるわけだ。そういえばオレが5点取った
セクション、圷さんクリーンしたって言ってたな。まずい、この二人にも負けてるぞオレ!」
僕は動揺しまくった。どうやらツートラの世界を甘く見すぎていたようだ。気合を入れ直し、結局そのセクションはク
リーンできた。

「なんだ、オレってやっぱうまいじゃん!」

そう思ったとたんにへたくそモードから通常モードに戻っていた。もう20年もトライアルやってるのに、このデリケー
トな(?)精神構造は全然変わらず、ホントいやになってしまう。

第5セクションは滝のような岩盤登りで、「こういうのって見た目はすごいけど以外と簡単なんだよね。」なんて甘
くみてたら1点着いてしまった。これで6点目、ヤバイなーこりゃ、なんて思いながらコースを走っていたらいつの
間にか広〜い国道に出ていた。
一般車両もビュンビュン走ってて「オイオイ、トライアルマシンでこんなとこ走っちゃっていーのかよ?」っていう感
じ。

いつも山奥でコソコソと走ってるもんで、こうして天下の尿道‥‥いや、公道を堂々と走れるのってすっごく不思議
な感じだ。

しばらく走ると、砂防ダムの脇に第6、7、8と三つセクションがあったが、これがどれも地方選手権レベル! サ
ンちゃんが第6で3点を取ってしまう。やはり125ではかなり苦しかったようだ。

ここでヤスさんの走ってるところを見たけど、いゃ〜さすが元チャンピオンだけの事はあるね!勝負強いっつーか
なんつーか、安定していて足を着きそうにないやね、実際。
きのう練習してた時と全然違うじゃないの、走りが。きのうのはなに、尺八吹いてた‥‥じゃなかった、三味線弾
いてたの?アレは。こりゃあサンちゃん、勝つのはちょっと難しいかもね!?

僕はといえば、第6と第8で1点を取ってしまい、トータル8点になっちゃった。サンちゃんはトータル4点。

「なんだ、たったの4点差か、5点ひとつで逆転じゃん!」僕は気を取り直して次のセクションへと向かった。



三塚政幸恐るべし

四輪車は通れないような山道をしばらく走ると町に出た。GSでガス補給し、少し走った所に第9セクションはあっ
た。町の中の広場にコンクリートの大小U字溝、丸太、ケーブルコアを組み合わせた人工セクションだ。

さすが町の中だけあって観客が多いなぁ、とよく見るとほとんどが前日のパラダイス大会に出た顔見知りの人じ
ゃないっすか!
「どれ、一発いいところを見せてやるか。」という感じでひらめ‥‥いや、華麗にクリーンを決め、次へ向かう。

第10、第11セクションは緩斜面のアップダウンで問題なくクリーン。そして第12セクション、ついに出ました125殺
しセクション!

少し段のついた急斜面を登って降りるだけだがかなり高低差もあるし最後の所は垂直に近くそびえ立っているの
で、これはいくら何でも125では無理のような気がする。
サンちゃんの表情も険しくなっている。

「サンちゃんもついに天狗のお面にドキドキ‥‥‥いや、年貢の納め時が来たようだな。」 

正直に告白しよう。この時僕は「サンちゃんがここで5点取ってくれれば一気に逆転‥‥ウッシッシ!」とひそか
に思った。

いよいよサンちゃんがトライする。
限界までエンジンの回転を上げて急斜面に挑んだがやはり125ではパワー不足、最後のそびえたった所の少し
手前で回転が落ちてしまい、誰もが「やっぱり無理だ」と思った次の瞬間だった。

「全身力こぶモード」に切り替わったサンちゃんとシント125は急斜面の上に飛び上がってしまった!まさに力ず
く、執念のクリーンである。

僕はこの時「ああ、この男にはマシンのハンデがあっても絶対に勝てねーや」と脱帽すると同時に、ひそかに5点
を期待していた自分がすごく恥ずかしくなってしまった。

そんな後ろめたい気持ちのままトライした僕は、登りきった所で1回足をついてしまう。
ものすごい自己嫌悪、穴があったら入りたいとはこの事だ。
(えっ?何でここでボケないのかって?そんなぁ、恥ずかしくって僕には書けませんよ、「穴があったら入れたい」
だなんて!?)

その後第13、14セクションは無難にクリーンし、ランチコントロールポイントに到着。午前の部は終わりだ。結局午
前のセクションを僕は9点で終えた。



ザ・転倒

雨は時折強くなったりしながらずっと降り続けていた。気温も低く、みんな「寒いよ〜!」などと言っていたが、今
思えばこの時はまだまだ大した寒さではなかった。素早く昼メシを済ませて次のセクションへ。

第15セクションは玉石の、いわゆるセコいセクションで、サンちゃんがもったいない1点を取ってしまう。僕は途中
でラインを外したものの、あの大木さんのサポートを受けながらラインを修正し、クリーンをたたき出す。(へっへ、
どうだ哲也うらやましいだろ!ちなみに大木さんとは一昨年内田哲也選手のサポートを務められた国際B級大木
光浩選手のことで、僕の練習仲間の間ではアイドル(?)的存在である。)

パンティー係‥‥いやパンチ係の女の子が「クリーン初めてですヨ」と笑顔で言った。

「オレに惚れちゃいけないぜ、お嬢さん。」

決めゼリフを残し、次のセクションへ向けてスロットルをフルオープンに‥‥いけねー、また創作モードになっちま
った!

かなりの距離を走ったところで第16セクションに着いた。三留さんが手で「パー!」という仕草をしている。

なんと第15セクションをとばしてしまったという。引き返すにはあまりにも距離があり過ぎだ。ご愁傷さま、であ
る。三留さんはこのセクションも5点になってしまい、ガックリ。反省ザル状態になっている。(この程度じゃ怒らな
いっスよね、三留さん?)

僕は出口まであとわずかという所で1点ついてしまう。次の第17セクションでもまた1点。今日の僕は完全に1点
地獄にはまってしまっている。第18セクションをクリーンし、僕が先頭になって三留さんとサンちゃんの3人で林道
のコースを走り続ける。

この時の僕は、さっき大木さんにサポートしてもらった事でちょっと浮かれてしまっていた。林道のコブ状になった
所でわざとリアを跳ねさせようとしたのだけどそこは手前が溝になっていてちょっとやりにくかった。よく覚えてい
ないがたぶんフロントが滑ったのだと思う。

『ズザザザザーッ』

気がついたら僕はスーパーマン状態で両手両足を伸ばし、腹ばいのまま林道の上を滑っていて、途中で180度
回転し頭が後ろになった状態でしばらく滑った後ようやく止まった。
薄れゆく意識の中で、(←オーバーだっつーの!)後ろにいた二人が大爆笑してるのが見えた‥‥‥‥(つづく)

果たして、大転倒を喫したマンビーの運命やいかに?そして優勝争いの結末は!?次号「後編」をお楽しみに!

‥‥‥え?なに?この企画二回連載じゃなかったの?えっ今回だけ!?!?だってまだ午後がスタートしたば
かりだよ。早くまとめに入れ?んな事言ったってあーた‥‥(←誰としゃべってんだよオマエは!?)

‥‥‥え〜、というわけで、大急ぎで話を進めたいと思います。コースで大転倒した僕は体の前面泥だらけで右
腕強打。沢の水で全身の泥を洗い流した結果ずぶ濡れとなる。
右腕はかなり痛く力が入らない。そして次のセクションでは3点を取ってしまう。

この頃から寒さとの闘いとなってきた。ほとんど直線の舗装路を延々と走る。時折激しくなる雨が顔に当たって痛
い。頭がボーッとしてくる。そして林道のコースでまた転倒、今度は左腕強打。満珍早漏‥‥いや、満身創痍で
ある。

とにかく寒い。冷えきった身体には、コースがうんざりする程長く感じられた。

いろいろな事を考えながら雨の中をひたすら走り続け、やっと、という感じでスタート&ゴール地点にある最終セク
ションに着いた。

サンちゃんのトライをすでにゴールしたヤスさんが缶ビール片手に見守っている。聞くとヤスさんはトータル10点で
ゴール、サンちゃんは最終セクションを残して5点、ここで5点を取ってもクリーン数はサンちゃんが上。すでに勝
負はついていた。

ちょっとラッキーな2点で最終セクションを走り終えたサンちゃんに僕は右手を差し出し、チーム監督の立場から
「とりあえず、おめでとう。」とあくまでも事務的な口調で言うのだった。

結局僕はそのセクションは3点になってしまい、トータル19点、3位という成績で初めてのツートラを終えた。

振り返ってみると、やはり第3セクションの5点が痛かったが、あれだけみんなが喜んでくれたのだから「フッ、こ
れで良かったのさ‥‥。」と僕は一人で納得した。

ゴール後ずぶ濡れのウエアを脱ぐと、僕の両腕は傷だらけ、右腕はまるでサンちゃんの腕のようにパンパンに腫
れ上がっていた。

『ツートラを甘く見ると痛い目にあうぜ!』

そんな声が聞こえたような気がして空を見上げると、一日中降り続いていた雨はもうほとんどあがっていた‥‥
‥‥。
(完)



あとがき

ちょっと尻切れトンボ状態になりましたが、楽しんでいただけましたか?
最後に僕の感想を言うとですね、やはりツートラは「大人の遊び」という感じで、僕より年上の人がたくさん出場し
てるし、その誰もが自分のスタンスで楽しんでいる。すごくいい雰囲気ですね。

まだ出場した事のない人は気の合った練習仲間を誘って、ぜひ一度出てみることをお勧めします。楽しい雰囲気
の中で勝負の世界も味わえるし、相手の失敗を思いっきり笑えるっていうのはツートラならではじゃないですか?

そして主催者の方には、一般的なサンデーライダーが恐怖感を感じてしまうようなセクションは絶対に避けて欲し
いと思います。現役の国際A級、B級ライダーがエントリーしていてもそれは無視して、そういう人たちはオールク
リーンで結構というつもりで設定して欲しいですね。
僕もスケジュールが合えばこれからもどんどん出たいと思っていますので、どこかのツートラ会場でお会いできる
かも知れません。その時は‥‥ウチのパーツ買ってくださいね!



これがその時の“ベータ・テクノTWKスペシャル/サンシャインヴァージョン”



− 2004年6月 Web上で再掲載時の追記 −

いや〜、お恥ずかしい限りです(^_^;)

自分の昔の作文を読むのって、ホントに恥ずかしいですよね?
まさにそんな感じ。そしてこれが、発行部数少ないとはいえ本に載っていたのかと思うと、もう顔から火が出そう
です、ボォォ〜!!

でも、10年たっても“芸風”あまり変わってませんかねぇ?この間アップした「入院日記」に同じフレーズ出てくるし
‥‥‥なんだかあまり成長してないなぁ。

でも、この頃の方が“シモネタ満載”のような気がするけど‥‥‥え?今の方が満載ですか!?!?

サンシャイントライアルのサイトはこちら→http://www2.jan.ne.jp/%7esunshine/

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